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もくばはまわる
木馬は廻る
江戸川 乱歩
「探偵趣味」探偵趣味の会、1926(大正15)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,819 字 · 20 页
となると、格二郎も今更ら後へは引かれぬ訳である。
「いいとも、館がはねたら、いつもの店で、お前のすきなのを買ってやるよ」
でも、格二郎は、さも浮々と、そんなことを受合いながらも、一つには、いい年をした爺さんが、こうして、十八の小娘に夢中になっているかと思うと、消えて了い度い程恥しく、一こと物を云ったあとでは、何とも形容の出来ぬ、胸の悪くなる様な、はかない様な、寂しい様な、変な気持に襲われるのと、もう一つは、その恥しい快楽を、自分の金でもあることか、泥棒のうわ前をはねた、不正の金によって、得ようとしている浅間しさ、みじめさが、じっとしていられぬ程に心を責め、お冬のいとしい姿の向うには、古女房のヒステリィ面、十二を頭に三人の子供達のおもかげ、そんなものが、頭の中を万字巴とかけ巡って、最早物事を判断する気力もなく、ままよ、なる様になれとばかり、彼は突如として大声に叫び出すのであった。
「機械場のお父つぁん、一つ景気よく馬を廻しておくんなさい。俺あ一度こいつに乗って見たくなった。お冬坊、手がすいているなら、お前も乗んな、そっちのおばさん、いや失敬失敬、お梅さんも、乗んなさい。