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ほんしゅうおうだん つうかいとほりょこう
本州横断 痛快徒歩旅行
井沢 衣水
「冐險世界 第四卷第拾參號」博文館、1911(明治44)年10月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,069 字 · 29 页
とやらかした。驚ろいたのは場内の見物人。婆さんも子供も女も、一整に驚愕の眼を将軍の顔上に集注した。今まで騒々しかった場内は急に水を打ったようになる。観衆三百人、まず将軍の頭抜けて大きな蛮声に度肝を抜かれたのである。
「諸君よ、吾輩は当地旅行の一青年である。はからずも今晩この活動写真会に会し、献身的に働らいておらるる一行諸君の熱情に感じ、ここに一場の感慨を述べる次第である。諸君よ、もし諸君が菓子饅頭を買うの余裕あるならば、この国家的大事業なる南極探検に応分の寄付なし給い。空しく結氷に遮されて南海シドニーの郊外に、涙を呑んで故国よりの吉報を待っておる探検隊一行の心中は、実に気の毒に堪えぬではないか」
をきっかけに熱弁を振うこと十五分、満場悉く感動して、一人の声を出すものもなし。蛮声終れば拍手急霰のごとし。将軍の髯面、ために穴の開く程観衆より見られた。意外の大手柄を立てて旅館へ帰る。
角力より帰った未醒氏、余程残念だったと見え、
「せめて今晩、大村がいればなあ。俺れじゃとても青年角力の大関を投げ飛ばすことは難かしい」
註に曰く、大村とは天狗倶楽郎の大関、工学士大村市造(横田注・一蔵)君で、未醒子、番付は天狗倶楽部の三段目なり。