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ほんしゅうおうだん つうかいとほりょこう
本州横断 痛快徒歩旅行
井沢 衣水
「冐險世界 第四卷第拾參號」博文館、1911(明治44)年10月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,069 字 · 29 页
ハッと驚ろく間もなく、バラバラと石塊混りの土砂が雪崩をなして落ちて来る。
仰おぎ見ると、コハそもいかに。真黒ケの大の男五、六人、四、五丈高き断崖の中腹に鶴嘴を持ってゲラゲラ大口開いて笑っている。吾々の立止まるを見るや、彼等はなおも猛烈に土砂石塊を浴せかけんと、鶴嘴を振り上げる。これには有繋の豪傑連も少なからず困った。地駄太踏んで憤慨したが、当の相手は五、六丈上方に天険を控えて待構えている。将軍もこれには手の出しようがない。こんな時こそ三十六計の奥の手を出して一散に駆け出し、危うく吾妻川の河底へ生埋めになる急場を辛くも通り過ぎ、四人相顧みて工夫の猛悪なるに驚ろく。
中の条町にて昼食。掛茶屋に腰を下ろしている間に、前の通りで五十ばかりになる田舎者と馬車の馭者とが押問答をしている。田舎者の連らしい三十位の女が子を抱いて傍に立っていた。
何でも馬車へ乗せるとか乗せぬとかいう話らしい。爺は頻りに嘆願しているが、馬車屋は頑として応ぜぬ。事情を聞けば、草津行の乗合馬車には赤馬車と称する会社があって、頗ぶる専横を極めている。知らずして他の個人経営の馬車にでも乗ろうものなら、それこそ大変。