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ほんちょうへんたいそうれいし

本朝変態葬礼史

中山 太郎

「犯罪科学 増刊号 異状風俗資料研究号」1931(昭和6)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,960 字 · 24 页

青空文庫

を防ぐことが出来なかったのである。加うるにこの時代にあっては悪疫の流行も思わぬ怪我も、この死霊や凶霊の為す仕業と考えていたのであるから、その死霊の発散して疎び荒ぶることを恐れて、かくは屍体を緊縛するようになったのである。我国で古く鎮花祭と云うのを、桜の花の散る頃に行うたのは、あたかもこの時分に死霊や疫霊が発散するので、それを防ぐための祈祷に外ならぬのである。

こうした民族心理は、変死を遂げた者、または叛臣や逆徒等の兇暴性を帯びた者の屍体を埋葬するに、さらに一段の惨酷を加えたことは、当然の帰結であった。そしてその方法は変死者なれば屍体を逆にして、橋の袂か四ツ辻に埋めたものである。これはこうした場所ならばたえず人馬の往来があるので、死霊が発散せぬよう踏み固めると信じたからである。沖縄県では近年まで変死者をこうして取扱ったもので、内地の各地に逆に歩く幽霊が出ると云う話のあるのも、また辻祭や辻占と称して四ツ辻が俗信と深い関係を有しているのはこれが為めである。宇治の橋姫の怪談などもこの習俗の伝説化されたものである。それから兇暴者の屍体は、これを幾つかに裁断して各所に分葬することとなっていた。