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すぎがき

杉垣

宮本 百合子

「中央公論」1939(昭和14)年11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,051 字 · 30 页

青空文庫

両脚をのばした。

「しかし、何んだなあ、子供のことを考えるとあまり無茶も出来んしなあ」

聴き手の気持には唐突に、云い出した。

「何しろ年子で三人だぜ。ここんなかじゃあ僕が横綱だろう。親父の酔狂でまさか子供を路頭に迷わせも出来ないしね」

すると戸田が、

「おい、おい」

まんざら揶揄ばかりでもないような太い声を出して咎めた。

「どっちなんだよ一体。大いに煽られたいのか、なだめて貰いたいのか、はっきりしろ、人さわがせな」

みんながどっと笑った。飯島もにやつきながら、それでもその話は決して断念し切れない様子で、赤と白との縞の日覆が半分ひろげられている大きい窓ガラスの方へ視線をやりながら、その眼をしばたたいているのであった。テーブルを立ったとき、戸田はモザイックの床の上で靴をパタパタやりながら、

「壮言はビールの泡とともに、か。とんだ飯島のアルトハイデルベルヒだよ」

都会人らしく疳をたてて云った。

河岸っぷちの歩道を一人で帰って来ながら、今までその場にあった雰囲気を思いかえすと、慎一は、やっぱりそこに、いかにも今日らしい神経の動きを見るのであった。みんな傍観的態度を保っていながら、その一面では飯島の亢奮につよい疑問の形で捲きこまれているのであった。