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むらのせいこうしゃ

村の成功者

佐々木 邦

「現代」1928(昭和3)年9月~1929(昭和4)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,883 字 · 84 页

青空文庫

と卓造君は如才なく冗談を言った。

「ハッハヽヽヽ」

「私は中等ですな」

と中年男が言った。

「然うです。未だ/\先があります。私は上等です。しかし人中で大切にされるようになっちゃお仕舞いです。何ならもう一遍下等へ後戻りをしたいものですな」

と老人は帽子を脱いで禿頭を煽いだ。面白い爺さんだ。皆クス/\笑った。

「私は薄々覚えがありますよ」

ともう一人、学校の先生らしい白詰襟の中年男が膝を進めた。

「はゝあ」

「初めて汽車が通った時、私は尋常、さあ、何年でしたかな、兎に角、尋常生でしたよ。今日は陸蒸汽が通るから成るべく見に行くようにといって、学校が休みになりました」

「然う/\、陸蒸汽、陸蒸汽」

と先の中年者が思い出した。

「角町からその陸蒸汽の初物を見物に行く時、例のガラクタ馬車に乗りましたよ。上等中等とは気がつきませんでしたが、坂道へかゝる度に皆下りて押しました」

「それは陸蒸汽の時じゃありますまい。汽車が通り始めてから馬車が出来たように私は覚えていますがな」

と老人は首を傾げた。

「いや、その前からでしょう」

「いや、○○町へ鉄道がかゝったから角町との交通が頻繁になってガラクタ馬車が出来たのです」