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むらのせいこうしゃ
村の成功者
佐々木 邦
「現代」1928(昭和3)年9月~1929(昭和4)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,883 字 · 84 页
「宜かろう」
「弁当を持って来給え」
「大変な騒ぎだ。併し君のは尾崎さんだかモダン・ガールだか分らないぜ」
「一挙両得さ。修養にもなれば娯楽にもなる。家でノラクラしているよりも必ず益するところがあるよ」
と勝田君は何処までも熱心だった。
二人は角町に着いて、活動写真館へ入った。正次郎君は待っていた。しかし卓造君には映画よりも、もっと興味を惹く問題があった。朝から見聞した事柄を綜合して考えると、何うしても百間川へ機運が向いている。水力電気は伯父さん年来の口癖で親戚間の笑い話になっているけれど、何うやらそれが実現されそうに思われる。同時に前途が明るくなったような心持がする。気がかりなのは尾崎さんの大滝検分だ。態彼処まで見に行くようなら、もう疑問の余地はない。しかし再び待ち呆けを食わされるようなら、万事休す。
「溺るゝ者は藁にも縋る」
という英語の字幕が目に入った時、卓造君は一寸悲観した。
「藁かも知れない」
と思って又考え直したが、その日見聞した条件には割引のつけようがなかった。
兄弟は十時近くに連れ立って村へ向った。
「正次郎、お前の祈ってくれたことが叶うかも知れないよ」