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むらのせいこうしゃ

村の成功者

佐々木 邦

「現代」1928(昭和3)年9月~1929(昭和4)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,883 字 · 84 页

青空文庫

「この頃の人間の頭じゃ迚も信じられないが、当時は皆一生懸命でやったのらしい。角町に唯一人賛成者があったが、そこの家へ石を投げ込むという騒ぎさ」

「誰です? その賛成者は」

「尾崎さんさ。呆れ返って東京へ行ってしまった。それぐらい目先の見える人だから、あんなに成功したんだよ」

「豪い人は矢っ張り違いますね」

「此方は反対成功祝賀会を開いてお祭り騒ぎをしたんだからお話にならない。現に田川の伯父さんはその時酔っぱらって、角町からの帰りに百間川へ落ちて死にかけたと言っている」

「今度訊いて見ましょう」

「田川は有志家だったから、その頃からソロ/\身上をへらしたのらしいよ。大伯父さんがこの村の代表だったそうだ。東京まで請願に出掛けたんだから真剣さ」

「一体何ういう理由で反対したんでしょう?」

と正次郎君は合点が行かない。

「それは分っている。鉄道が来ると交通が便利になるからさ」

「分りませんな」

「交通が便利になれば、第一にこの辺の米を皆持って行かれてしまう。第二に他所の人間が入り込む。つまり飢饉と泥棒を招くようなものだと思って、無暗に怖がったんだね」

「成程」

「○○町だってそれと知ったら反対したろうが、角町に出し抜かれて、突如押しつけられたものだから、否も応もない。