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むらのせいこうしゃ
村の成功者
佐々木 邦
「現代」1928(昭和3)年9月~1929(昭和4)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,883 字 · 84 页
今の巡査だが、当時はそれが唯一の登竜門で、邏卒から大臣まで出世をした人が大勢ある。お祖父さんも辛抱していたら知事ぐらいにはなったろうが、何うも山が見えないものだから腰が据らない。それに鹿児島人が威張ったそうだ」
「はゝあ」
「お祖父さんが小言を言うと、人民は『この邏卒は田舎漢だよ』って馬鹿にする。鹿児島出身の邏卒が鹿児島弁でやると、『この邏卒さんは真物だ』と言って怖がる。同じ田舎漢でも鹿児島人丈け幅が利く。お祖父さんは憤慨して帰って来てしまった。目印があれば我慢するんだけれど、何分山がないから心細くて頑張れない」
「…………」
「その次が親父さ。これは大学まで漕ぎつけたのだから僕より豪いよ。三四年行っていたらしい。しかしもう一息というところでお祖父さんが死んで半年ばかり帰っていたものだから悉皆後戻りをしてしまった。又行ったけれど、もう落ちつかない。その頃はカッフェがなかった代りに矢場ってものがあった。矢場女さ。親父は今でこそ鹿爪らしい顔をしているけれど、ナカ/\性が悪かったんだよ」
「…………」
「それから僕さ」
「もう分っています」
「いや、僕の一代記は長いんだぜ」