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むらのせいこうしゃ
村の成功者
佐々木 邦
「現代」1928(昭和3)年9月~1929(昭和4)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,883 字 · 84 页
「俺がつれて行ってやる」
と卓造君が引受けた。
「睦さんは相変らず銀行ですか?」
「近頃やめたそうだよ」
「何故ですか?」
「角町へ行って僅かばかりの月給を取っても割に合わないと言っていた。安いから不平なんだろう」
「百間川の水力電気は何うです?」
「あれも駄目らしい」
「早くあれが何うかならないと兄さんは困りましょう」
「何あに」
「伯父さんは大きなことを考えていますな。しかし成功するかも知れませんよ。僕はこの間の晩百間川を渡る時拝んで来ました」
と正次郎君は殊勝らしいことを言った。
卓造君はこの田川の伯父の援助を受けて○○町の中学校へ入っている。もう五年生だ。斯ういう事情の下に勉強するものは油断がない。一年生以来首席で通して来た。尤も他に修業の便宜がなかったでもない。若し父親の一存に委せたら、弟の正次郎君のように師範学校へ行って矢張り優等生になっていたろう。父親は小学校長だから、最初から師範を主張した。初等教育に対する職務上の熱心もあったろうが、子供の多いに鑑みて家計上の都合もあった。しかしその頃の卓造君はそんなことに頓着なく、
「宗像君も安藤君も中学ですから、僕も中学へやって下さい」