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とうきょうようさい

東京要塞

海野 十三

「サンデー毎日」毎日新聞社、1938(昭和13)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,341 字 · 37 页

青空文庫

そんな話が、あっちでもこっちでも取り交されているうちに、更に国民を愕かせるニュースが入ってきた。

それは例の忠魂記念塔を、某大国の一等巡洋艦がわざわざ積んで、日本まで廻航してくるという報道であった。

「本国政府は、この機に際し、親愛なる日本国民に敬意を表さんがため、記念塔を特に一等巡洋艦マール号に積載してお届けすることにしました」

とは、駐日某大国大使パット氏が、新聞記者団を引見して、莞爾として語ったところであった。

その新聞記事を読んだ国民は、更に某大国の厚意に感激した。

しかし一部の識者は、逆に眉を顰めた。

「これはどうも変だね。某大国はこの頃になって急に日本を好意攻めにするじゃないか。忠魂記念塔を新調して贈ってくれるというのさえ大変なことだのに、その上、昨年建造したばかりの精鋭マール号をその荷船として派遣するなんて、ちと大袈裟すぎると思わないか」

「時局がら新造艦マール号の性能試験をやる意味もあるんじゃないかね」

「そんなことなら、なにも極東まで来なくてもよさそうなものだ。これは何か、日本近海の測量を目的にしているのじゃないかな」

「そんなら何もマール号を煩わさずとも、中国艦隊にやらせばいいことじゃないか」