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とうきょうようさい
東京要塞
海野 十三
「サンデー毎日」毎日新聞社、1938(昭和13)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,341 字 · 37 页
帆村がいま踏んでいる足の下は、相当しっかりしたコンクリートの床になっていた。漆喰をその上に、約二センチメートルの厚さで塗ってゆくのであった。
この漆喰は、かねて話に聞いたとおり、普通の漆喰とは異ったものであった。石灰と赤土だけは普通のものを使うが、ふのりは使わず、その代り何だか妙にどろどろしたものや、外に二、三種の化学薬品を混入するのであった。それらを交ぜあわすのがなかなか厄介であり、それからうまく交ざった後は、早いところ塗ってしまわないと、直ぐ固まってしまうのだった。つい凹凸が出来たり、罅や筋が入る。すると松竹梅の三監督がやってきて、やり直しを命ずる。なかなか骨の折れる仕事だった。
この特殊な漆喰は、一体どんな特長があるのであろうか。
帆村の気づいたところは、第一に非常に早乾きがすること、第二に、固まってしまえば鋼のような強い弾力を帯びること、第三に耐熱性に富んでいるらしい非常に優秀な漆喰だった。すくなくとも市場には、こんなに勝れた漆喰が知られていない。
そういう優秀な漆喰をここに敷くという目的は、どういうところにあるのだろうか。
普通の機械工場なら、こんな漆喰を塗るまでもなく、その下のコンクリート土台だけで十分であった。