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とうきょうようさい
東京要塞
海野 十三
「サンデー毎日」毎日新聞社、1938(昭和13)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,341 字 · 37 页
「ふーむ、莫迦に細心にやっているんだね」
大官は心から感嘆している様子だった。
「ねえ帆村君。これはあまり大きな声でいえないことだが、君がいま行っている仕事場は、ひょっとすると何かわが警備関係の防空室とかいう筋合のものではないのかね」
「ええ、それは――」
「もしそうだとすると、君は自国の機密建物を調べていることになって、大損をするよ」
「そうです。貴官の仰有るとおりの疑問を、僕も持ちました。僕も実は最初からそれを考えていたんです。しかし僕はあの建物のが、すくなくとも我が警備関係のものではない証拠をつきとめたのです」
「ほほう、それはよかった。で、その証拠というのは、一体どんなものだ」
大官は眼鏡ごしに、ちらと黒眼を動かした。
「その証拠というのは、臭いなんです」
「えっ、臭いとは」
「臭いというものについて、一般の人はわりあい不注意ですよ。しかし臭いの研究というものは莫迦にならぬものです。日本人が寄れば、なんとなく沢庵くさいといわれます。これはつまり日本人の身体からは、食物の特殊性からくる独特の臭いが発散しているのです。日本人同士では、お互に同じ沢庵臭をもっているのでそれと分りませんが、外国人にはそれがたいへんよく匂う」