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とうきょうようさい
東京要塞
海野 十三
「サンデー毎日」毎日新聞社、1938(昭和13)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,341 字 · 37 页
贅沢な場合でも、その上に僅かのアスファルトを流しこめばいいのだ。それにも拘らず、普通以上の強靭さを漆喰で持たせようというには、何か訳がなければならぬ。この平々坦々たる床の上に、そも如何なる物品が載るのであろうか。帆村はせっせと鏝を動かしながらもそれを想って、何とはなく背中がぞくぞくと寒くなるのを覚えた。
その日の所見を、その後、某大官の前で、帆村は次のように報告している。
「なんとかしてその漆喰の見本を、せめて定性分析の出来るくらいの少量でも持ってこようと思いましたが、監視が厳重なので控えました」
「爪の間に入れるとか、頭髪の中にこぼすとか、なんとかいい方法がありそうなものじゃないか」
「そんなことは向うで百も承知ですよ。いよいよ仕事が終ったというときには、僕たちは強制的に風呂の中に入れられてしまうのです。その風呂には、女がいましてね。僕たちの頭のてっぺんから足の爪まですっかり洗ってくれるのです。爪はきれいに截った上、御丁寧にブラッシュをかけるという始末です。外へ出ると、服はすっかり着がえさせられます。履物やマットまで変るのです。恐らく厳重を極めていますよ」