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ひがしやまじだいにおけるいちしんしんのせいかつ
東山時代における一縉紳の生活
原 勝郎
「藝文」京都大学文学部、1917(大正6)年8月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,142 字 · 134 页
されば落飾後、平素黒衣を著し律を持したというのも、さもあるべきことで、これからして天文六年後の物故するまで全く遁世人の生活をなし遂げたのである。
普通尋常の一公卿を中心人物としての記述ならば、予が今まで説いただけでも、それすらすでに大袈裟に過ぎるので、その上にさらに呶々弁を弄する必要はないのであるが、事実上の主人公を三条西実隆にとった本篇においては、なお一回読者の忍耐を濫用しなければならぬ廉がある。それはほかでもない文筆殊に歌道の方面からしての宗祇およびその他との関係である。
当代能書の第一人として、禁裏からしばしば書写の命を受けたことは、前回にすでに述べたごとくであるが、彼の名の都はおろか、津々浦々のはてまでも永く記憶されたのは、一つにはその水茎の跡のかおりであって見れば、煩をいとわず今少しく彼の書について補いしるさんこと、必ずしも蛇足ではあるまい。実隆の入木道の妙を得、在来の御家流に唐様を加味した霊腕を揮ったことは、その筆に成れりという『孝経』によっても徴し得らるることであるが、彼が何人からしてこれを習い伝えたかは、予の不敏いまだこれを明かにしない。