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いなかがえり

林芙美子随筆集

林 芙美子

林芙美子『林芙美子随筆集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:田舎がえり、落合町山川記、貸家探し、生活、文学的自叙伝、恋愛の微醺、朝御飯、着物雑考、新生の門、平凡な女。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 58,157 字 · 118 页

青空文庫

うまごやしの花がいっぱいだし、ピクニックをするに恰好の場所である。この草原のつきたところに大きな豚小屋があって、その豚小屋の近くに、甲斐仁代さんと云う二科の絵描きさんが住んでいた。御主人を中出三也さんと云って、この人は帝展派だ。お二人とも酒が好きで、画壇には二人とも古い人たちである。私はこの甲斐さんの半晴半曇な絵が好きで、ばつけの堰を越しては豚小屋の奥の可愛いアトリエへ遊びに行った。

夕方など、このばつけの板橋の上から、目白商業の山を見ると、まるで六甲の山を遠くから見るように、色々に色が変って暮れて行ってしまう。目白商業と云えばこの学校の運動場を借りてはよく絵を書く人たちが野球をやった。のんびり講などと云うハッピを着た連中などの中に中出さんなんかも混っていて、オウエンの方が汗が出る始末であった。

来る人たちが、落合は遠いから大久保あたりか、いっそ本郷あたりに越して来てはどうかと云われるのだけれど、二ヶ月や三ヶ月は平気で貸してくれる店屋も出来ているので、なかなか越す気にはなれない。それに散歩の道が沢山あるし、哲学堂も近かった。春の哲学堂の中は静かで素敵だ。