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こたんのふうかくをはいす
枯淡の風格を排す
「作品 第六巻第五号」1935(昭和10)年5月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,411 字 · 15 页
悩むべきを悩まざるところの、一途に毒々しさがあるばかりである。
いわば自分の行為を全て当然として肯定し、同様に他人のものをも肯定し、もって他人にも自分の姿をそのまま肯定せしめようとする、肯定という巧みな約束を暗に強いることによって、傷や痛みを持ちまいとする、揚句には内省や批判さえ一途に若々しい未熟なものと思わしめようとする、「旅日記」一篇の底に働く徳田氏の作家的態度というものは、これ以上の何物でもないのである。
ジイドのように、いい年をして尚個体を先頭に立ててのたうちまわり、悪あがきをする、時々まるで十七八の少年を見るような熱狂ぶりを見せたりするが、これが作家の本当の姿ではないだろうか。年をとって肉体がなくなるわけではないのだし、多少性慾の減退ぐらいあるにしても、個体にからまる悩みまで失くなるものとは夢にも思えぬ。日本帝国の忠良なる作家達が齢と共に悩みの数をめっきり減らしてくるというのは、減らすような不当な作為を暗に用い、或いは気付かざる伝統の気風によって、然うならしめられているとしか思われない。
「通」という言葉は江戸の文人が愛好した言葉であり、一体に日本文学の伝統的気風は、いい加減の頃合いをみて切りよく引きあげ、義理にも納まろうという、意気な心掛けを見せるところが理想らしい。