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ざくろ
柘榴
山本 周五郎
「サン写真新聞」サン写真新聞社、1948(昭和23)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,342 字 · 25 页
「焼くのではなかった。焼いてはならなかった。いま読めばもっともっと本当のことがわかったに違いないのに」
真沙は四十歳で「年寄」になった。幕府や三家の大上※(「藹」の「言」に代えて「月」、第3水準1-91-26)に当る奥勤めの最上位で、切米も三十石、合力二十五両という扶持である。その頃から気持もまたひと転換した。昌蔵との結婚の失敗についても、自分に責のある点は云うまでもないとして、松室の不運な家系とか、その影響をうけた昌蔵の性格とか、また複雑に絡み合っていた周囲の事情とか、要するに不幸は避け難かったということなどがわかってきた。……ただそれが避け難い宿命だったと思えば思うほど、真沙自身にもう少しの知恵と愛情があったら、昌蔵の破滅だけは救えたであろうと、そのことだけがいつまでも悔いとして残った。
真沙は五十二の年においとまが下って帰郷した。城下の桃山という処に家を賜わり、生涯五人扶持に、奥方から年十両ずつ下ることになったのである。……
桃山は城下町から二十町ほど北へいった丘陵で、家はその南側の中腹にあり、赤松の林ごしに城と武家町の一部を眺められる。もと老職の隠居が住んでいたそうで、部屋数は少ないが千坪ばかりの庭があり、松や杉や楓や桜などが、家をかこむように繁っている。