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ざくろ
柘榴
山本 周五郎
「サン写真新聞」サン写真新聞社、1948(昭和23)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,342 字 · 25 页
よほど季感に敏い人だったとみえ、楓や桜なども松杉と対照して、眼立たぬようにくふうがしてあり、思わぬ灌木の茂みに、苔付きの石燈籠が据えてあったりした。
さとの井沼では、ずっと前に父も母も逝き、長兄も五年まえに亡くなって、その子の善左衛門が家を継いでいた。これはなじみも薄かったし、気性が合わないので、ほんの儀礼に往来するだけだったし、その他の親族も同じように代が替っていて、親しく問い訪われるという相手が殆んど無かった。……召使は、金造という老人の下僕に、小間使と下女を加えた四人暮しである。三十日もすると、小間使のいねがまず淋しさに堪らなくなったのだろう。「この辺は冬になると狐が出るのでございますって――」などと背中を見るような眼つきで云った。そのくらいのことはあるかも知れない。北側にもう一段高くなって、ちらばらに武家の別墅がある他は、丘から向うの葉島谷にかけて、多く松や櫟の林と畑つづきである。真沙の幼い頃には狼が出るとさえいわれ、松茸やしめじを採りに来るにも怯えたものだ。
「では聴狐庵とでもつけようかな」
そのとき小間使にはこう笑ったものの、さすがに自分でも肩の寒いような気持は避けられなかった。