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かきいろのかみふうせん

柿色の紙風船

海野 十三

「新青年」1934(昭和9)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,032 字 · 28 页

青空文庫

それで紙風船の作業は終った。

あとは五十嵐が、出来上った紙風船を、お椀を積むように、ドンドン積み重ねてゆく。すると、ときどき検査係が廻って来て、その風船の山を向うへ搬んでいってしまう。

私と五十嵐とは、うまく呼吸を合わせて、

「はッ、――」ポン。

「いやア。――」ポン。

と、まるで鼓を打っているように、紙風船の肛門を貼ってゆくのであった。――だがこんな仕事は、せいぜい一と月もやれば、いやになるものだった。

しかし月日の経つのは早いもので、そのうちに刑務所のお正月を、とうとう五度、迎えてしまった。やがて二月が来れば、いよいよ娑婆の人になれることとなった。その後、あのラジウムは遂に怪しまれることもなく、私の独房の箒の中に、五年の歳月を送ったのだった。私に新たな希望の光がだんだんと明るく燃えだした。私は暮夜、あの鉛筆の芯ほどのラジウムを掌の上に転がしては、紅い灯のつく裏街の風景などを胸に描いていた。

ところが出獄も、もうあと三週間に迫ったという一月二十五日のこと、私の独房に、思いがけない二人の来訪者があった。

「オイ、一九九四号、起きてるか。――」

看守の後から背広姿の二人の訪客が入って来た。