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かきいろのかみふうせん

柿色の紙風船

海野 十三

「新青年」1934(昭和9)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,032 字 · 28 页

青空文庫

私は保釈出獄の使者だろうと直感した。

(オヤ)私は心の中で訝った。二人の客のうちの一人は、見知り越しの医務長だった。もう一人は、日焼けのした背の高いスポーツマンのような男だった。

「この男ですよ。入ったときは、実にひどい痔でしてナ、ところが私の例の治療法で、予期しないほど早く癒ってしまいました」

「はア、はア」

「どうか何なとお話下さい。あとでこの男の患部を御覧に入れましょう」

「いや、それには及びません。ただ、すこし話をして見たいです」

「それはどうぞ御自由に……」

その見馴れぬ紳士は、私の痔病について、いろいろと質問を発した。私はそれについて淀みなく返事をすることに勉めた。しかしあの病院のことだけは言わなかった。

紳士は大した質問もせずに、医務長と共に引上げていった。

そのあとで私はガッカリして、便器の上に蓋をして作ってある椅子の上に腰を下した。

(どうも変だナ)

紳士は一見医師としか見えぬ質問をしていったが、どうも医師くさいところに欠けているような気がした。疵を持つ脛には、それがピーンと響いたのだった。

(探偵かしら……)

にわかの不安に私の胸は戦きはじめた。