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えいぞうのし

栄蔵の死

宮本 百合子

「宮本百合子全集 第二十九巻」新日本出版社、1981(昭和56)年12月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 38,295 字 · 77 页

青空文庫

なって居るお金の目には、何かにつけて、はがゆい事ばかりがうつった。

車で来る、八百屋からの買物を一文も価切らなかった事などで、お君は、いつもいつもいやな事ばかりきかされて居た。

「お前の国では、庭先に燃きつけはころがって居るし、裏には大根が御意なりなんだから、御知りじゃああるまいが、東京ってところはお湯を一杯飲むだって、ただじゃあないんだよ。

何んでも、彼でも買わなけりゃあならないのに、八百屋、魚屋に、御義理だてはしてられないじゃあないかえ。

お君位の時には、まだ田舎に居て、東京の、トの字も知らなかったくせに、今ではもうすっかり生粋の江戸っ子ぶって、口の利き様でも、物のあつかい様でもいやに、さばけた様な振りをして居る癖に、西の人特有の、勘定高い性質は、年を取る毎にはげしくなって行った。

人の見かけを、江戸前らしく仕度てるために、内所の苦労は又、人なみではない。

嫁には、無理じいに茶漬飯を食べさせて置いて、自分は刺身を添えさせ、外から来る人には、嫁が親切で、と云いたいたちであった。

赤の他人にはよくして、身内の事は振り向きもしない。お君の親達は「百面相」