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えいぞうのし
栄蔵の死
宮本 百合子
「宮本百合子全集 第二十九巻」新日本出版社、1981(昭和56)年12月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 38,295 字 · 77 页
どうぞ、たのんますさかい、優しゅうしてやって下さい。
私が目でも見えてどしどし稼げたら、何ぞの事も出来るやろが、もう廃人なんやから、お君は、貴方ばかりをたよりにしとるんやさかいなあ。
此女も、親子縁が薄うおすのや。
と哀願する様にたのんだ。
チラッとお君の顔を見て、軽い笑を口の端の辺にうかべながら、
「ええ大丈夫です、
御心配なさらずと。
とうす赤い顔をして返事をするのを見てお君は、そうやって、たのまれてくれるのも夫なればこそ、ああやって頼んでくれるのも親だからこそと、しみじみ嬉しい気持になって居た。
恭二と栄蔵とは、お君を中にはさんで、両側に、ねそべりながら、田舎の作物の事だの、養蚕の状況などについて話がはずんだ。
そう云う事に暗い恭二が、熱心に、
「そうすると、どうなるんです?」
などと、深く深く問うて来るのを、説明するのが栄蔵には快よかった。
折々、
「な父はん、私も。
などと、自分の病気についての事を云い出したい様にして居たけれ共、栄蔵は、種々な話に紛らして、一寸の間も、否な話からのがれて居たがった。
お君にあれこれ云わないでも、もう心の中はその心配で、一杯になって居る。