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えいぞうのし
栄蔵の死
宮本 百合子
「宮本百合子全集 第二十九巻」新日本出版社、1981(昭和56)年12月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 38,295 字 · 77 页
「自分が居る以上必してそんな事はさせない。
恭二は、十七八の青年の様に真正直に心に思った。
実の親子でないので余計お君の云う事ばかりが信じられて、留守の間にあれこれ厭味を云われて、わびしく啜り泣いて居るお君の姿をいじらしく想像したりした。
けれ共、正直で気の弱い恭二は、お金の仕打があんまりだと思う様な事があっても、口に出して、
「そんな事をしてくれるな。
とは、どんなにしても云えなかった。
何かいざこざが起ったりすると、目顔ですがるお君を見向きもしないで、盲滅法に、床屋だの銭湯に飛び込んだ。
そうも出来ない時には、部屋の隅にかたく座って、眼も心もつぶって、木像の様に身動きさえもしなかった。
只、専ら怖れて居ると云う様にして居た。それだから恭二自身も、いざとなった場合、はっきり、
私が不賛成です。
と云い切れるかどうかが疑問であったし、お君も亦、頼む夫が、ふらりふらりして居るので、余計、取越苦労や廻し気ばかりをして居た。
(五)
烈しい風がグーン、グーンと吼えて通る。黄色い砂が津浪の様に押寄せて来ては栄蔵の鼻と云わず口と云わずジャリジャリに汚して行く。