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こうせいのはなし
校正の話
中谷 宇吉郎
「図書」1954(昭和29)年10月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 2,488 字 · 6 页
そうすると、字面が綺麗になるわけである。この分の組換えは、出版社が負担してくれるようである。
アメリカの校正は、以上の如く、終始一貫甚だ合理的で、すべて計算の上に立っている。著者と出版社との間には、人情味などはあまり無いようである。しかしこの非人情のお蔭で、校正は二回ですみ、印刷の能率は大いに上がる。したがって印刷工の労銀も、高くなるわけである。
印刷の能率が上がることは、非常によいことで、日本も、こういうふうにしたら、と一寸考えてみたこともある。しかしそれは当分不可能のことと気がついた。これを実行するには、日本における学者尊重の善風をこわす必要があるからである。著者が書いたとおりに、職工が活字を忠実に拾う。しかし出来上がった初校を、著者は平気で直して、別に意に介しない。それは学者の精神労働が、植字工の肉体労働に比して、甚だ高尚なものと考えられているからである。
アメリカふうの校正は、最後のところは、著者の精神労働と、植字工の肉体労働とを、同列に見るというところに、その基盤がありそうである。そうだとすると、日本の場合には、このやり方は、参考になるというくらいのところであろう。