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きりゅうつうしん

桐生通信

坂口 安吾

「読売新聞 第二七七五五号~第二八〇二五号」1954(昭和29)年3月11日~12月6日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 16,394 字 · 33 页

青空文庫

このあたりの女中が一番長くいつくというのはさもあろうと私も思った。

電話のかけ方も知らないし、ガスのつけ方も知らない。電話のベルがなると静かに戸をあけて、一礼して

「ただいま電話が鳴っております」

と報告する。報告しなくたってベルの音はきこえるよ。ゆうゆうたる物腰、雅致があってよかったが、不便でもあった。山の中にも電灯だけはあるから、ガスも電灯なみにセンをひねるだけでよいと心得たのは当然で、殺されかけたこともあったが、これくらい何も知らずに働きにきてくれる子は、かえっていじらしく、かわいいものだ。わが家にいるうちに一人前のオヨメになれるだけのことをしてやりたいという責任を感じるものである。

この子たちが都会の子供なみに知っていたのは流行歌である。ラジオのせいだ。どんな歌でも、むしろ都会の子以上に知っている。ラジオのほかに何もないせいだろう。先日も冗談音楽の主題歌をうたっているのをふと聞いたが、なるほどワンマン政府がラジオを気に病むのは自然だなと思ったのである。

デフレを活用した男

私の家から百メートルもないところで珍しい事件が起った。Sという買継商が倒産してつるし上げにあったのである。