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きりゅうつうしん

桐生通信

坂口 安吾

「読売新聞 第二七七五五号~第二八〇二五号」1954(昭和29)年3月11日~12月6日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 16,394 字 · 33 页

青空文庫

秋のなかばから冬の終るまで太陽を見ることのできない雪国では小学校の子供たちまであきらめきった考え方や話し方をするようになるものだと書いたのである。それを速達で送って旅行に出発したが車中で落ちあった同行の友人に

「この清水トンネルをこえたとたんにガラリと天候が一変しているのだよ。トンネルの向こう側にはもう太陽がないのだ。暗いたれこめた空、窓をたたくみぞれ、来る日も来る日も清水トンネルの向こう側は一冬中そうなんだよ。うそのように思えるけど、トンネルを境にこの太陽が必ずおさらばなんだからね」

と念をおして言いきかせ、また

「冬の新潟のもう一つの特色は見はるかす水田が満目の湖水と化していることだ。農民たちは小舟に乗ってとりいれするものだよ」

と説明に及んでいたものだった。ところがトンネルをでても太陽がかがやいている。関東側よりもむしろ澄みきった太陽が雲一つない青空にさんさんとかがやいている。また越後平野の水田は湖水どころか一滴の水もない。秋の旅も冬の旅もそうだった。そして旅行中の連日にわたっていつも頭上にまぶしい太陽がかがやいていたのだ。

「昭和二十三年以来こうなんです。