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くわのきものがたり

桑の木物語

山本 周五郎

「キング」大日本雄辯會講談社、1949(昭和24)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 39,815 字 · 79 页

青空文庫

とか、だいぶてひどくやられている。大名屋敷の奥庭、――町家などでもそうだが、――桑の木を植えるなどというのは変っているが、それが奇矯というほどのことかどうか。いちがいに断言はできないだろう。

また読者の便宜のために、同じ「杏花亭筆記」にある彼の祖父の記事を、その要点だけぬいて紹介しよう。

「土井勘右衛門、虚木と号す。浄松院さまのとき留守役(世襲)より側御用に召され、老職を兼ねて信任もっとも篤く、浄松院さま御他界ののちは、世子の御養育に専念した。泰春院さまの英明果断の資質は、勘右衛門に負うところ多しともいう。――また他に評がある。彼は豪放磊落なれど、酒を好み、老年に及ぶまで遊里にでいりし、俗曲、俳諧に長じ、日常のようすには不拘束なことが少なくなかった」と。

これにも「他の評」として一種の批判がつけ加えてある。重職であるうえに藩主の幼君の育て役といえば、相当な人格者でなければならない筈だが、酒好きで遊里にでいりして、日常が不拘束だとするとあまり褒めたはなしではない。――そしてこの点、悠二郎の「奔放無埒」と、なにか因果関係があるのではないだろうか。

悠二郎は双生児であった。