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くわのきものがたり
桑の木物語
山本 周五郎
「キング」大日本雄辯會講談社、1949(昭和24)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 39,815 字 · 79 页
のあるように生きてゆこう。言葉をつくしてこう云った。――正篤はわかって、感動して呉れた、悠二郎にはその感動が偽りだったとは思えない。正篤はそのときこう云いはしなかったか、
――よくわかった、おまえの云うとおり大事なのは生きることだ、生きられる限り生きよう、だがおまえだけは、どんなことがあっても側を離れて呉れるな。
そしてその年の秋にはこうも云った筈だ。
――時期がきたらおれは自分で政治をみる、その時期がきたら、悠二郎、おまえと新泉と二人でおれの左右の腕になって呉れ。
これらのことはみなごまかしだったのだろうか、その場かぎりの根なし言だったのだろうか。悠二郎は呻く、酒を呷って酔おうとする、しかしどうやっても胸はおさまらなかった。
「ばかばかしい、女の腐ったように、いつまでみれんがましくうだうだしているんだ」
自分を嘲弄するようにせせら笑う。
「大名は威厳をつくらなくちゃあならねえ、おれにゃあ子供のときからの裏の裏まで知られている、そんな者に側にいられちゃあ威厳もへったくれもねえ、邪魔なのはわかりきったこった、そこに気がつかねえのか唐変木め」
だがそう呟きながら、彼の眼には涙がたまっていた。