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つちのなかからのはなし
桜の森の満開の下
坂口安吾『桜の森の満開の下』。同一底本的分册已合并为一书。收入:土の中からの話、家康、閑山、禅僧、小さな部屋、道鏡。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 76,558 字 · 153 页
その孫が大八島しらす天皇、現御神たる成人の日を夢みていた。その家づきの宿命の虫の如き執拗さをもって、夢み、祈り、そして、育てていたのだ。人はすべて子孫の繁栄を祈るものであるかも知れぬが、別して女は、別して強烈沈静なる女は、現実的、肉体的な繁栄や威風をもとめてやまないものである。北条政子と同じ意志がここにある。そして、政子の如く苦難に面していなかった。順風に追われていた。
我々がここに見出すのは、政府ではなく、家であり、そして、家の意志である。
*
文武天皇は二十五で夭折した。皇子首は幼少であったから、その生長をまつまで、文武天皇の母(草壁皇子の妃)が帝位についた。元明天皇である。天智天皇の娘であり、持統天皇の妹であった。
つづいて元正天皇に譲位した。首皇子が尚成人に至らなかったからである。元正天皇は元明天皇の長女であり、文武天皇の姉であり、首皇子の伯母であった。
こうして、祖母と伯母二代の女帝によって現人神としての成人を希われ祈られ待たれた首皇子は、後の聖武天皇であった。
女帝達の意志のうちに、日本の政治、日本の支配、いわば天皇家の勢力は遅滞なく進行していた。