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つちのなかからのはなし

桜の森の満開の下

坂口 安吾

坂口安吾『桜の森の満開の下』。同一底本的分册已合并为一书。收入:土の中からの話、家康、閑山、禅僧、小さな部屋、道鏡。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 76,558 字 · 153 页

青空文庫

て、自分の直接の責任にならないばかりか、改めて己れの命令によって修正したり禁令したり、失敗まで利用している。こうして一度も京都へ行かないうちに天下の権が京都から鎌倉へ自然に流れてくるような巧みな工作を施したものだ。

もっとも頼朝の場合は京都を尊敬するという形式を売って実権を買ったので大義名分があり、京都の方に敵もあったが味方も多い。藤原一門の対立の如きものもあり、九条兼実の如く頼朝から関白氏の長者を貰って、頼朝に天下の実権を引渡すような、いつの世にも絶えまのないエゴイストの存在が巧みに利用せられているのである。

家康の場合は先ず根本が違っていて、豊臣徳川は同一線上に並立するものであり、朝廷と武家というぐあいに虚名を与えて実をとるということができない。亡ぼすか、さもなければ四五十万石を与えて自分の家来にするか、どっちみちその一方が名も実権も共にとらざるを得なかった。彼は征夷大将軍を称し頼朝の後裔たることを看板にしたが、幕府の経営方針などにも多分に頼朝を学んだ跡があり、義経だ行家だとバッタバッタ近親功臣を殺してまで波立つ元を絶っていった血なまぐさいやり口まで頼朝に習った感がある。