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つちのなかからのはなし
桜の森の満開の下
坂口安吾『桜の森の満開の下』。同一底本的分册已合并为一书。收入:土の中からの話、家康、閑山、禅僧、小さな部屋、道鏡。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 76,558 字 · 153 页
て迷惑が身に及んではつまらない、ということだ。都会の人間なら、下して助けようとしてみるか、怖くなって逃げだして申告するかだが、怖くても逃げて申告するのが損のようで気が進まないので、怖いのを我慢の上で一日の仕事をすましてきて素知らぬ顔をしている。
越後の農村の諺に、女が二人会って一時間話をすると五臓六腑までさらけて見せてしまう、というのがあるそうだが、農村の女は自分達が正直で五臓六腑までさらけて見せたつもりで、本当にそう思いこんでいるのだから始末が悪い。女が二人会えば如何にも本音を吐いたように真実めかして実は化かし合うものだ、というのは我々の方の諺なのだが、万事につけてこういう風にあべこべで、本人達が自分自身の善良さを信じて疑うことを知らないのが、何よりの困り物なのである。
なんでもかでも自分たちは善良で、人をだますことはないと信じている。そのくせ、農村に於ける訴訟事件といえば全国大概似たようなもので、親友とか縁者から田畑とか金をかりて心安だてに証文を渡さなかったのをよいことに、借りた覚えはないといって返却せずもともと自分の物だと主張するようになったり、隣りの畑の境界の垣を一寸二寸ずつ動かして目に余るひろげ方をして訴訟になるという類いで、親友でも隣人でも隙さえあれば裏切る。