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きょうゆう

梟雄

坂口 安吾

「文藝春秋 第三一巻第八号」1953(昭和28)年6月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,160 字 · 31 页

青空文庫

兵力の少い信長はほとんど全軍をひきつれて討伐にでなければならない。すると道三が部下に命じて兵をださせ、信長の留守の城を守ってくれるのであった。

その援兵は、もし欲すれば、いつまでも留守城を占領することができた。そして、信長を亡し、所領を奪うことができたのである。

信長はそれを心配したことがなかった。いつもガラあきの城を明け渡して戦争にでかけるのだ。しかし、信長の敵たちはまだ道三の心を疑っていた。そんな筈は有りッこないと思ったのである。今に信長はやられるだろうと考えていた。一年たち、二年たった。信長はやられない。

人々は仕方なしに大悪党のマゴコロを信じなければならなくなった。薄気味わるくなってきた。やられるのは信長ではなくて、信長の敵の自分たちかも知れないと感じるようになったのである。ウッカリ信長に手出しができなくなってしまった。失われた信長の兵力は少しずつ恢復しはじめた。

★

義龍にライ病の症状が現れた。

「六尺五寸のバカでライ病。取り柄がないな」

道三は苦りきった。

義龍はひそかに自分の腹心を養成し、また寄せ集めた。マジメで、行いが正しくて、学を好み、臣下を愛した。