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かんおけのはなよめ
棺桶の花嫁
海野 十三
「ぷろふいる」1937(昭和12)年1~3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 42,845 字 · 86 页
――果して半次がお千を殺した真犯人であろうか!
敷島の吸殻といい、煙草入れといい、それからまたあの前日の会見の捨て台辞といい、半次の日常生活といい、十六貫もあろうというお千の身体を大木に吊り下げたといい、半次を真犯人と断定する材料は決して少くなかった。それにも拘らず、杜はなんとなく半次が真犯人でないような気がしてならなかった。
(どうしてそんな風に思うんだろう?)
杜は自分の心の隅々を綿密に探してみるのであった。別にこれこれと思うものも見当らないのだ。だがそのうちに、もしかするとこれかも知れないと思うことがあった。それは、あの事件の後で、杜が現場に落ちていた血痕を拭って一つの証拠を湮滅し、それからまた毛布についていた血痕の部分を鋏で切り取ってマッチ函のなかに収め、同じく証拠湮滅を図ったことである。その血痕が直接に犯人を指しているというのではないが、啻そのような証拠を隠滅した行動それ自体が杜には後悔され、そして予審が終結したのにも拘らず、その結末が彼だけには信じられないのであった。それはたしかにこの世ながらの地獄の一つだと、杜は感じたことである。
あの血痕を、それから自身持参して検事局を訪ねようかと思わぬでもなかったけれど、一日経ち二日経ち、彼は遂にそれを決行しなかった。