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しいのき
椎の木
豊島 与志雄
「赤とんぼ」実業之日本社、1946(昭和21)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,002 字 · 13 页
猫はそこに爪をたててちょっと止まりましたが、身をねじりながら、ぱっと地面にとびおりました。
一郎は笑いました。
「ミミーもだめだっていうよ。あきらめようよ。」
二郎は考えこみました。それから、きゅうに眼をかがやかせました。
「そうだ、植木屋にたのもう。近いうちに植木屋が来るって、お母さまが言っていらしたよ。植木屋なら、あすこまで登れるよ。」
「ほんとに来るのかい。」
「ほんとだよ。お母さまに聞いてごらんよ。」
「そんなら、凧をつないでおこう。」
糸を切って、そのはじを、つつじの木にゆわえつけました。
そして、二郎は糸巻をもち、一郎は猫をだいて、あちらへ行きました。
椎の上枝のへんは、にわかに、そうぞうしくなりました。そこに住んでる多くの椋鳥が、凧のことでしばらく静まりかえったあと、いっそうにぎやかに飛びかい、なきたてました。
そこへ、一羽の烏がとんできて、上枝にとまりました。椋鳥たちはちょっと黙りました。
烏は用心ぶかくあたりを見まわしました。それから、じっと凧を眺めました。凧にかいてある赤いひげだるまの絵を、うさんくさそうに眺めました。
その近くに、一羽の椋鳥がとびだしてゆきました。