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しいのき

椎の木

豊島 与志雄

「赤とんぼ」実業之日本社、1946(昭和21)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,002 字 · 13 页

青空文庫

」

「石を投げつけてみたら……。」

「ばか、破けるばかりじゃないか。」

それで、二郎はもう手段がつきました。うらめしそうに凧をあおぎ見ました。

「兄さんがいけないんだよ。僕がもうやめようというのに、糸をすっかりくりだしてしまうんだもの。」

「風がなくなったのがいけないんだ。きゅうになくなったんだから……。」

「風がきゅうになくなるの。」

「なくなるよ。きゅうに吹いてくることがあるだろう。だから、きゅうになくなることだってあるさ。」

「でも、ゆっくり吹いてくることもあるよ。」

「うん。ゆっくり吹いてきて、ゆっくりなくなることもあるさ。」

一郎はまた凧の糸をいろいろに引っぱってみました。だめでした。

「お前やってごらんよ。」

二郎は糸を受け取って、いろいろに引っぱってみました。

一郎はあたりを見まわして、三毛猫を見つけました。

「おや、ミミーがこんなとこにねてるよ。」

一郎は猫を抱いてきました。そして、椎の木に引っかかってる凧を見せました。

「ミミー、この木に登って、あの凧を取って来いよ。いいか、取って来たら、うまいものをあげるよ。取って来いよミミー。いいか、ミミー。」

一郎は猫を椎の木にだきつかせました。