轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
えのきものがたり
榎物語
山本 周五郎
「オール読物」文藝春秋新社、1961(昭和36)年9月~10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,519 字 · 67 页
国吉はとまどい、暫くためらっていて、それから静かに呼びかけた。どうなさいました。どうかなさったんですか。さわの啜り泣きがやみ、ゆっくりと振向いた。
「ありがとう」とさわは微笑した、「なんでもないのよ」
国吉も頬笑み返しながら、それなら自分はたち去るべきだろうか、それともいたほうがいいだろうか、と考え迷った。
「このあいだはうれしかったわ」とさわは低い声で云った、「知らないうちに抜けてしまったの、あれはなんという薬なの」
国吉はさわがなんのことを云っているのか、すぐには理解できなかった。そしてそれが棘を刺したときのことであり、そのあいだに二年も経っているのを知って、おどろきと、かなしいような気分に浸された。
「あれはしぶきという草の葉です」と彼は答えた、「あのときは火で焙ったのですが、火傷にも効くし、干したのを煎じて持薬にする者もいます、――このあいだと仰しゃったので、なんのことかと思いました、あれからもう二年の余にもなりますからね」
「あたしが十五の年だったわね」さわは頭の中でその年月を思い返すようにみえた、「――ほんとうに」と声をひそめて云った、「あたしついこのあいだのことのように思っていたのに、本当にもう二年も経つのね」