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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
04 第四部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,078 字 · 285 页
柴田と自分とはべつべつに喚問されたが、自分に対する質問は極めて冷たく、かつ辛辣であった。退出するとき、『老中との対談は他言を禁ずる』と念を押された」
外記に対しては鄭重であって、質問も少なく、「伊達家が安泰であるようにはからうつもりである」ともらしたそうであった。
日記はそこで終っていた。
甲斐は静かに筆を置いた。机に両の肱を突き、両手の指でそっと眼を押えながら、彼は深い溜息をついた。
「九日からのことはまだ書いてない」と彼は呟いた、「九日には三人の申次から老中の命で、古内志摩を出府させるようにと言って来、すぐに仙台へ急使をやった」
岩沼さまはずっと一ノ関と会っていない。一ノ関に対する悪評が高まったのも原因の一つであろうが、隠岐守(前の右京)に対しても、一ノ関で毒害の陰謀がある、という密告がしきりで、そのために面会を避けているのだと伝えられている。
「また一ノ関では、涌谷さまが老中に政治問題を持ち出したのは、隠岐さまのしり押しによるものだ、と怒っておられたようだ」こう呟いて、甲斐は眼を押えていた手を放した、「――政治問題が出ることを、一ノ関は考えなかったのだろうか、単に境論のことだけで、老中が取上げるとでも思ったのだろうか」