轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
04 第四部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,078 字 · 285 页
もちろん、宇乃はそれを口には出さなかった、それだけはどんなに言葉を選んでもわかってもらえそうには思えない。「おばあさま」にさえわかってもらえるとは思えないからであった。
朝日がのぼるのであろう、あたりがにわかに明るくなり、霧がゆらぎはじめた。
慶月院はまだ薙刀を振っていた。
晒した生平の帷子の裾をからげ、襷をかけ、汗止をしている。芝草を踏む素足は露で濡れているし、帷子も汗になっていた。皺はあるけれども、おもながな顔は若わかしく血の色がさし、掛け声は力づよく張りがあった。
宇乃はふとうしろへ振返った。小砂利の鳴る音を聞いたからであるが、振返ってみると帯刀であった。萱笠をかぶり短袴に草履ばきで、釣竿と魚籠を持ち、餌箱を紐で肩に掛けていた。彼は宇乃に頬笑みかけながら近づいて来、祖母のほうを見て頷いた。それを認めたのだろう、津多女は薙刀をおろし、脇に持ってこっちへ来た。
「また釣りにおいでか」
彼女は薙刀を宇乃に渡し、汗止や襷をとりながら帯刀に云った。
「いや、帰って来たところです」と帯刀が答えて云った、「鮎がくだりはじめたというので、ゆうべ夜半すぎてからでかけたのです」