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けんりょくのひげき
権力の悲劇
宮本 百合子
「婦人公論」1949(昭和24)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,912 字 · 10 页
勉学ざかりの少年、青年である子息たちが、色をなして自殺説を否定しはじめたという心理。それらを、世間の一部では、あれを政治的な、犯罪にしようとする検事局の圧力だろうと思った。時はたって、秋風がふきそめるきのうきょう、この不可解な状態のかげにひそむ一つの理由として生活的な問題がおいおい一般の推測に浸透してきた。丸の内の宏壮な建物を見てもわかるように、保険会社は富んでいるものだが、現在、生命保険会社の支払い方法は、他殺だと保険金詐欺でない限り普通の病死と同じに全額を支払うことになっているのだそうだ。自殺の場合、契約後一年――三年は全く支払わず、三年以上の分には多少弔慰金を出す。国鉄の退職金、弔慰金の支払い方法にも非常なひらきがつけられているのだそうである。故人の閲歴から見て、退職金は五十万円ぐらいで、自殺であるとそれっきりであるが、他殺であるなら殉職として、国鉄公社のしらべによると最低百万円をくだらないことになる。
故人は機械科出の技術者であった。そのポストが大整理という苦しい仕事に当面していず、たんまり利権の汁につかっている実利の地位であったのなら、いまの腐敗した政党人たちが、何でおとなしい技術出の個人にそんな椅子をゆずっておこう! 民自党の本質的なこわさが、故人の運命をアーク燈の光のように照し出している。