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けんりょくのひげき

権力の悲劇

宮本 百合子

「婦人公論」1949(昭和24)年11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,912 字 · 10 页

青空文庫

ガスの制限もゆるやかになりました(ただし料金は今までの倍)。そして冬は石炭も手に入るであろう(一トン三千円から五千円の金があるならば――)。

ここに、わたしたちを堪えがたくする現実の矛盾がある。理性のある社会の生活であると思うことのできないあからさまな不合理が強いられている。

社会の新しい歴史は人民によってのみ推しすすめられる。この必然は、この現実のなかに生れてきているのである。

国鉄整理にからんでおこった下山国鉄総裁の死は、最大限に政府の便宜のために利用された。共産党に関係のある兇悪な犯罪事件のように挑発され、一部の知識人さえその暗示にまきこまれた。ところが他殺でないことがわかったきょうでも、まだ死者に対するはっきりした哀悼は示されていない。

命を奪われるほど悪人でなかった故人。むしろ弱点も人間的といえた故人。国鉄五十万人と運命をともにした故人。世間に暗い衝撃を与えることは、故人の望むところでなかったろう。自殺と直感した、といわれたときこそその人の妻らしい悲しみのありかたとして、すべての人にも肯かれたのに、いつか、他殺説を固執するようになった夫人の態度。