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はしのした
橋の下
山本 周五郎
「小説新潮」新潮社、1958(昭和33)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,189 字 · 25 页
をしたでしょう、ことによると城代家老になったかもしれませんが、いまの私には羨む気持もなし、特に祝う気持もない、ただひとつ、思いだすたびに心が痛むのは、あのはたし合で友を斬ったことです。
――これまでだ、人の来ないうちに医者を呼んでくれ。
友達が倒れながらそう叫んだ声が、年をとるにしたがって、しだいにはっきりと耳によみがえってくるようになりました、おそらく、友達はおもて沙汰にならぬように、事の始末をしようと思ったのでしょう、さよう、私にとってはこの一つだけが、癒えることのない傷口になりましたし、出世をしたのが友達であり、自分がこのようになりはてたことを、いまでは有難いとさえ思っているくらいです」
石垣の上の隙間で、妻女が身動きをし、なにかぶつぶつと呟くのが聞えた。うるさくって眠れない、と云っているらしい。老人はちょっと振返ったが、すぐに向き直って、焚火のぐあいを直した。
「なが話をしてさぞ御迷惑だったでしょう」と老人が穏やかな眼で若侍を見た、「茶をもう一ついかがですか」
「頂きましょう」と若侍が答えた。しかし声が喉でかすれたので、彼はもういちどくり返した、「ええ、頂きます」