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はしのした
橋の下
山本 周五郎
「小説新潮」新潮社、1958(昭和33)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,189 字 · 25 页
――人柄も悪くない、なにかわけのある夫婦だろう。
城下の人たちはそう云って、着古した物などを、わざわざ持っていってやる者もある、という話を聞いたこともあった。
「では、――」と若侍が云った、「邪魔をさせてもらおう」
老人はどうぞと云い、掛けてある鍋をおろすと、うしろから蓆を取り出して、焚火の脇へ敷いた。蓆は新しいもので、まだ甘ずっぱいような藁の匂いがしていた。若侍は刀をとってから、その上に腰をおろし、そしてまわりのようすを眺めた。
頭上には土合橋が屋根になっていた。水の干いた河原に坐って見あげると、おどろくほど高いが、それでも屋根の役をすることはたしかであった。橋のつけねには石が組んであるが、その石垣と橋桁のあいだに三尺ほどの隙間があり、二三の包の置いてあるのが見えた。おそらく、そこが老人たちの寝場所になるのであろう。若い侍はそう思いながら、ふと眼を細くした。そこに置いてある包の一つから、刀の柄が見えたのである。眼をとめて見ると、それは紛れもなく刀の柄であった。
老人は焚火に湯沸しを掛けていた。焚火には太い枯枝を三叉に立て、結びめのところに鉤がさがっている。