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はるはばしゃにのって
機械・春は馬車に乗って
横光 利一
横光利一『機械・春は馬車に乗って』。同一底本的分册已合并为一书。收入:春は馬車に乗って、比叡、ナポレオンと田虫、睡蓮、罌粟の中、厨房日記。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 77,492 字 · 156 页
ところが、梶のいるこの地方には、新しい機関の発生を待ち望んでいる群衆以外に、これはまた変った形態が残っていた。それは領主の家老が隆盛の言に従い、明治政府の掌中に実権を譲ったとき、一戦を覚悟の決死隊の一団である。彼らは自身たちの領主がすでに明治に降(くだ)ったと知ると、明治の飯を食わずと連袂(れんべい)して山間の僻地(へきち)に立て籠(こも)り、今なお一団となって共産村を造っていた。ここでは一団が山野を開拓して田畑となし、共同の養蚕所を持ち、学校をその一部にあてた堅実質素な生活を維持しつつ、絶対に他の容喙(ようかい)を入れない純然たる態度を守って世を睥睨(へいげい)していた。誰が見ても、まさに共産党以上の牢固(ろうこ)さと単純さとがここにあった。しかし、これさえ国家は保護している。義理人情という日本の知性のこの二つの形の純潔さに対して、ヨーロッパの知性のいかなる最高のものがこれを笑い得るであろうか。――
梶はこのように思いながら間もなく東京の自分の家へ帰って来た。
梶が東京の我が家へ初めて戻ったときは季節は寒さに向っていた。彼が帰って家の周囲を見渡すと今までの広い空地はどこにもなくなり、東西南北家がぎっしり建っていた。