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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

03 第三部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,781 字 · 235 页

青空文庫

彼は、しかし、すぐそれを後悔した。そして、

「大沢さんどこまで行ったんだろう。」

と、べつのことを言った。

二人は、寝床が変り過ぎているのと、ひもじいのとで、しばらくは眠れそうにもなかったが、体が温まるにつれて、ついうとうととなっていた。すると、

「本田、本田――」

と呼ぶ声が、どこからかきこえて来た。恭一は、びっくりしてはね起きたが、その時には、大沢は、もう藁の上にのぼっており、真晴な中をごそごそと手さぐりしているのだった。

「すまんかったなあ、つい寝ちゃって。」

恭一が闇をすかしながらそう言うと、大沢はその声の方にはって来ながら、

「十五六分も行くと、小さな村があったんだ。しかし、とても泊めてくれそうにないよ。どうも僕の人相が悪いらしいんだ。しかし、やっと駄菓子だけは手に入れて来た。今夜はこれでがまんするんだな。」

それから、ばさばさと紙の音をさせていたが、

「次郎君は、ねちゃったのか。――起こしちゃかわいそうかね。」

次郎も、しかし、その時には眼をさましていたのである。彼は、

「僕、おきています。」

と、恭一の肩につかまりながら、起きあがった。

三人は、それから、大沢のもって来た新聞紙の袋に、かわるがわる手をつっこんでは駄菓子を食った。