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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
03 第三部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,781 字 · 235 页
円いのや、四角いのや、棒みたいなのがあったが、色はむろんまるで見えなかった。たいていはぼろぼろのものだったが、その中に、固くて黒砂糖の味のするのがわずかばかりまじっていた。しかし、どれもこれもうまかった。三人とも、ものも言わないでむさぼり食った。袋がからになると、大沢が、
「水もあるよ。」
と、次郎の手に水筒を握らせた。次郎はぐっぐっと息がきれるまで飲んで、それを大沢にかえした。すると大沢は今度は恭一の手にそれを渡した。
「うんと飲めよ、僕はもうたらふく飲んで来たんだから。」
それでも、恭一の飲み終ったあとを、彼はからになるまで飲んだ。そしてそれがすむとすぐ、三人はかたまって藁の中にもぐりこんだ。
「僕一人で行ったのが、どうもいけなかったらしいんだ。」
と、大沢は藁束の落ちつきの悪いところをもぞもぞと直しながら、
「僕の人相では、やはり次郎君のような可憐な感じがしないんだね。年をとっていると損だよ。こんな時には。」
恭一が吹き出した。次郎は、これまで三晩とも、大沢が宿の交渉をはじめると、女の人がきまったように自分の方を見ながら、何かと同情するようなことを言ってくれたのを思い出し、くすぐったいような、恥ずかしいような、そして何かみじめなような気持になるのだった。