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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
05 第五部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,443 字 · 398 页
これは、かれが助手として塾生活をはじめた当初からの、一つの誓いみたようになっていたのである。
かれが、便所に通ずる廊下の角をまがると、一段さがった入り口のたたきの上に立って、何かしきりと声高にがなりたてている一人の塾生がいた。見ると、飯島好造だった。
「おはよう。ここは何室の受け持ちでしたかね。」
次郎は近づいて行って声をかけた。
「第五室です。僕たちで、最初にここを受け持つことにしたんです。」
飯島は、いかにも得意らしくこたえた。
ゆうべの懇談会で、日々の掃除の分担は管理部で割りあて、毎晩就寝前に、翌日の分を各室に通告するということにきまったのだったが、その管理部の責任を、最初の一週間第五室が負うことになっている関係上、だれしもいやがる便所掃除を、まず手始めに自分たちで引きうけることにしたものであろう。それはそれで、むろんいいことにちがいない。しかしあたりまえ以上のいいことでもなさそうだ。――次郎は、つい、そんな皮肉な気持ちになったのだった。
しかし、つぎの瞬間に、かれの頭にひらめいたのは大河無門のことだった。かれは、すると、もう飯島の存在を忘れて、大河の姿を便所のあちらこちらにさがしていた。