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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
05 第五部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,443 字 · 398 页
そのうちに、二三名の塾生が事務室にはいって来て、すみの机で謄写版をすりだした。――塾生たちは、分担の仕事の種類によっては、そのための特別の時間を与えられていなかったので、それを間にあうように果たすためには、どんなわずかな休み時間をでも活用することを怠るわけには行かなかったのである。
謄写版をすりながら、かれらは話しだした。最初に口をきったのは、たしか青山敬太郎だった。
「農村の科学化とか共同化とかいうことも、あんなふうに話してもらうと、なるほどと思うね。」
「ぼく、これまで同じような題目の話をほうぼうできいたが、今日ほどぴんとこたえたことはないよ。内容に大したちがいはないがね。」
「やっぱり話す人の人柄が大事なんだな。」
「そう言うと、ここに来る先生は、外来の先生でも、人柄に一派通ずるところがあるんじゃないかな。」
「うむ、どの先生もしみじみとしたところがあって、本気でぼくたちのことを考えていてくれるという気がするね。」
「ぼくは、はじめのうち、この塾の先生たちには、何だか活気がなくて物足りない気がしていたんだが、今から考えてみると、こちらが上っ調子だったんだね。