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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
05 第五部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,443 字 · 398 页
興国塾の塾生たちの足音が消え、朝倉先生夫妻と次郎とが塾長室にはいると、そのあとを追うようにして五六名の塾生たちがおしかけて来た。その中には大河無門もいた。かれらは口々に言った。
「すいぶん盛んな連中だったね。何しろぼくたちとは生活がちがいすぎているんだ。こちらの言うことなんか、はじめのうち、てんで聞こうともしないで、自分たちの言いたいことだけをしゃべりまくるんだ。閉口したよ。」
「それでも、食後はいやに愉快そうだったじゃないか。やはり地区別の話し合いは、それだけ効果的だったと思うね。」
「そういえば、食後には、催促されてもふしぎにだれも理屈を言いだすものがなかったね。ひる間の意気込みとはまるでちがっているんで、あの時はぼくも意外だったよ。」
「すると、やはり多少は考えたかな。」
「考えたんじゃないよ。本能だよ。」
と、大河無門が口をはさんだ。
「あの連中だって、つけ焼き刃の理屈をならべるよりか、りんごを食ったり、歌をうたったりするほうが実はおもしろいんだよ。ふふふ。」
それから朝倉先生のほうを向いて、
「今日、ぼくたちの班で話しあってみたかぎりでは、あの連中の生活には、自然で大っぴらな楽しみというものがまるでないらしいんです。