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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

05 第五部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,443 字 · 398 页

青空文庫

二時近くになると、ぼつぼつ、塾生が集まり出した。リュック・サックを負うたものもあり、入塾のためにわざわざ買い求めたとしか思えないような真新しい革のトランクをぶらさげているものもあった。たいていは、カーキ色の青年団服だったが、中に四五名背広姿がまじっており、それらは比較的年かさの青年たちだった。

どの顔もひどくつかれて、不安そうに見えた。これは、毎回のことで、決してめずらしいことではなかった。入塾生の大部分は、東京の土をふむのがはじめてであり、それに一人旅が多い。募集要項の末尾に印刷されている道順だけをたよりに、東京駅や、上野駅や、新宿駅の雑踏をぬけ、池袋から私鉄にのりかえて、ここまでたどりつくのは、かれらにとって、なみたいていの気苦労ではなかったのである。

次郎は、青年たちのそうした顔が見えだすと、もう荒田老や道江の顔など思い出しているひまがなかった。かれは、かれらがまだ玄関に足をふみ入れないうちに、何かと歓迎の気持ちをあらわすような言葉をかけた。そして、かれらの名前をきき、それを名簿とてらしあわせて、到着のしるしをつけおわると、すぐかれらに朝倉夫人を紹介した。